女性の“いつか妊娠したい”の切り札になる? 「卵子凍結」のリアル

02 April 2019

女性の“いつか妊娠したい”の切り札になる? 「卵子凍結」のリアル

忙しく流れていく毎日、パートナーもいないし、結婚や妊娠の予定もない……。ふと気が付いたら、妊娠しにくい年齢になっている可能性もある。「いつかは子供がほしい」、そんな女性たちにとって、卵子凍結は救世主なのか!? 存在は知っていても詳しい事情を知らない卵子凍結について、杉山産婦人科の杉山力一先生に話を伺った。

杉山力一先生

杉山産婦人科 理事長 杉山力一先生

医学博士。1994年、東京医大を卒業。生殖医療に従事し、1999年北九州セントマザーに国内留学。体外受精の基礎を学ぶ。実家の分娩施設、杉山産婦人科に併設し、2001年に不妊治療専門の杉山レディスクリニック開院。2007年に分娩、生殖医療・内視鏡手術を行う総合施設、杉山産婦人科世田谷を開院。2011年、杉山産婦人科丸の内 開院。2018年、新宿駅からすぐの場所に「仕事をしながらでも通院できること」をコンセプトとした新宿院を誕生させる。 https://www.sugiyama.or.jp/shinjuku/

一般的に、“卵子凍結”や“卵子凍結保存”と呼ばれる“未受精卵凍結保存”。卵子凍結と聞くと、新しい技術だと思われがちだが、実は違うという。

「世界で初めて未受精卵凍結保存での出産が報告されたのは、1986年のオーストラリアでのケースです。その後は、不妊治療や妊娠を希望するがん患者さんなどのために、未受精卵の凍結保存は行われてきました。日本でスタートしたのは、約10年前ですね」と話すのは、不妊治療で定評がある杉山産婦人科の理事長の杉山力一先生。

年齢とともに減りゆく卵子。なんと毎月500個ペースで激減している!

私たちは生まれたときに、約700万個もの卵子を持っているといわれている。ところが、この卵子、驚くほど速いスピードで目減りしていくという。

「個人差はありますが、毎月500個ぐらいのペースで減っていきます。20代まではある程度の数がありますが、30代になると5万ぐらいまで低下し、40代になると5000個ぐらいまで激減します。5000個もあれば妊娠できそうと思うかもしれませんが、卵子があれば確実に妊娠できるというものではありません。年齢を重ねれば、卵子の状態も変化し、受精しにくい状態のものが増えてきます。そういったことから、40代以降は妊娠しにくいのです」

40代の妊娠出産は“まれなケース”と考えるべき

セレブなど、高年齢出産のニュースを目にする機会が増えているが、それがスタンダードだと女性たちが勘違いしているのが気になると杉山先生はいう。

「確かに、40代でも自然妊娠する方もいます。でも、残念ながらとてもまれです。一般的には妊娠しにくいのが現状です。不妊治療を重ねても妊娠が叶わない方もいらっしゃいます。しかし、40代で妊娠・出産した有名人などを目にすると、“私もまだまだ大丈夫”と考える方が多い。女性たちに“高年齢出産の年齢はいくつだと思いますか”と聞くと、“40代から”と考えている方が多い。しかし、医療現場では35歳からが高年齢出産と捉えています」

こういった思考のなかで、“卵子凍結”は女性たちの救世主になるのでは、と考える人が増えている。実際に、杉山医師のところにも年間50~100名の卵子凍結希望者が受診しに来るという。

「今は忙しいからとりあえずキープ」という人が多い

実際にクリニックに来る女性たちは、どんな理由で卵子凍結を希望するのだろうか。

「さまざまな方が来られますが、目立つのは有名企業に勤めている女性たちですね。仕事が忙しく、今は結婚の予定もない。とはいえ卵子の期限は心配なので、とりあえずキープしたいという方が多い。実際に、そういう理由で卵子凍結した方が妊娠出産にまで至ったケースはまだありません。将来に対する不安感を払拭するための“お守り”的な存在なのかもしれませんね」

実際に卵子凍結をすると、杉山産婦人科では下記の費用がかかるという。

採卵 ¥200,000(卵子が全て空胞で卵子が1個も得られなかった場合は¥50,000)
静脈麻酔 ¥50,000(麻酔希望者のみ)
卵子凍結 ¥50,000/本(容器1本で最大2個の卵子が同時に保管可能)
感染症検査 ¥13,000(型、AMH)
排卵誘発 約¥30,000~50,000
凍結延長(2年目以降) ¥50,000/年(容器1本につき)

既婚者(事実婚が含む場合も)の不妊治療の場合は、国から助成を受けられることもあるが、独身女性の卵子凍結の場合は保険適応ではなく、すべて自由診療となる。

「だったら私もやってみようかな」と思った人もいるかもしれない。しかし、その前に知っておくべきことがあると杉山先生はいう。
次回は、卵子凍結と年齢の関係について詳しく解説してもらう。

Photo: Getty Images Text: Manabi Ito