完璧な姿勢って存在するの?

15 August 2018

完璧な姿勢って存在するの?

子どもの頃に猫背を怒られたことあるよね? 背筋を伸ばして座りなさい、と両親や教師たちがあまりに何度も繰り返すので、猫背は必ず背中の問題につながるという考えが私たちの脳裏に深く刻まれてしまったのでは?

今のあなたは背筋を伸ばして座ってる? まっすぐにピンと伸びた、見たところ完璧な姿勢をキープしようとすると、体に負担を感じない? もしそうならリラックス。専門家の話では、背中を丸めることに問題はない。むしろ実際には猫背が、ある種の背中の痛みを緩和するのに役立つかもしれないという。

 

通念とは裏腹に、科学的には座ったときや立ったときに背筋が伸びているのが完璧な姿勢であるという証拠も、そもそも完璧な姿勢というものが存在することを示す証拠もない。

 

「背筋を伸ばして座ったら頭の上に本を乗せてパランスを取り、背中に自然なカーブを描かせて一日中その姿勢でいるべきだ、なんて昔は話していたけれど、姿勢にバラツキがあることの方がはるかに重要だというのが最近の研究の主旨。つまり、動きや変化のない固まった姿勢をキープするより、一日を通して姿勢を変えた方がいいということ」 と語るのは、理学療法士のスコット・マレー。

 

オーストラリア、カーティン大学の理学療法運動科学教授で筋骨格理学療法士のピーター・オサリバンによると、彼の研究と臨床実験の結果、猫背と背痛の間には何の関係もないことが明らかになった。

 

「背痛の原因が特定の姿勢にあるというための証拠がない。

私たちに分かっているのは背面痛を抱えて座る人は、痛みがない人より頑張る傾向にあるということ。それは確かで、背中が痛い人の筋肉は実際に張り詰めている。つまり、背中を支える筋肉がリラックスしていないことが伺える」 とオサリバン教授は続ける。

背中が痛くて来院する人の大多数は背中が非常に真っすぐで、それが背中にいいと強く信じているんだけれど、実際の検査をすると大きな痛みを伴うことが多く、背中をリラックスするように言った途端に痛みが和らぐ。これは治療の現場で最もよくあること」

 

本当に完璧な姿勢をめぐる議論は多いと予想されるけれど、豪カイロプラクターズ協会西オーストラリア支店長のジョシュア・ティムスは、良い姿勢と悪い姿勢が存在するのは確かだと考える。

 

「悪い姿勢と不快感の間に相互関係があるのは間違いない。それが背面痛であるにしても、全身に違和感があるだけにしてもね。背中の真ん中から前かがみになると、どう感じる? 胸郭が圧迫されて、たぶん背中の中心にもいくらかの圧迫感があり、首がすごく前に出る。だから長時間このような姿勢で過ごしていたら、ある程度の不快感はあるはずだよ。

でも、ひどく猫背で首が前に出た状態では、深く息を吸うのが非常に困難なことにも気付くはず。体にとって、あまり機能的な姿勢とは言えないんだ」


迷信1 背筋を伸ばして座らないと、背中が痛くなる

オサリバン教授によると、「背筋を伸ばして座るのが背中に一番いい」 という考えは、科学的な事実というより文化的な信念。

 

「人々は人生の非常に早い段階で、背筋を伸ばしなさいというメッセージを受ける。事実、私の患者のほとんどは、子どもの頃に背筋を伸ばすように言われ、俗にいう完璧な姿勢を維持するようになった。突き詰めていくと、姿勢のベースになっているのは文化。望ましい姿勢に関する信念体系があり、そこに健康上の利益をくっ付けている」 と教授は語る。

 

マレーには、真っすぐ座った姿勢を崩してリラックスするよう伝えたところ、背痛が和らいだ女性患者が居た。

「非常にアクティブな女性で、エクササイズが大好きだったんだけれど、仕事中はデスクに座っている必要があったんだ。背筋は伸ばしておくものだと信じていたので、仕事中に姿勢を変えず、何カ月にもわたり痛みが蓄積していった。けれど、一時間ごとに席を立つだけで彼女の問題は解決したんだ」

 

マレーは、自分の弟も背筋を伸ばした姿勢を滅多に崩さないことに気付き、彼にも似たようなアドバイスをしたという。

「僕の弟は長年腰痛に悩んでいたんだけれど、猫背になってもいいんだと伝えたら著しく改善した。背中が硬直して、筋肉が凝りすぎていたんだ」

 

オサリバン教授は、背筋を伸ばした姿勢がベストだという観念には、脊椎の多様性が考慮されていないと指摘する。

「もともと脊椎がすごく曲がっている人もいるので、背筋を伸ばした姿勢がベストというのは、彼らにとって非常にアンフェアだと思う。その姿勢をキープすることが身体的に不可能な人たちに、できないことをやれと言っている。そんなのは全ての人間が同じことをするべきで、多様性は無視しましょうと言っているようなもの。

背筋は伸びているのがいいとする風潮はすごく不健康だけれど、学校やジム、人間工学トレーニングをはじめ、至る所で見受けられる。非常に広く知られた通説で、変えるのが実に難しい」


迷信2 体を曲げるのは背中に悪い

背筋を伸ばしたまま体を曲げるのは、ちょっとぎこちないし違和感があるけれど、背中を曲げるのはすごく体に悪いから仕方ないよね? いや、そうとも言い切れない。

 

「背中を曲げるのはとてもいいことだし、すごくリラックスできるのに、私たちは体を曲げるときも背中をまっすぐにするという信念を生み出してしまった。つまり、みんな背中をガチガチにしてリラックスさせていないということ。あまり快適とは言えないね」 とオサリバン教授。

 

「体を曲げるのを怖がる人が多く、それが何となく姿勢にも現れている。体の他の部位を曲げるのは平気なのに、背中だと怖がるんだよね」

 

これにはマレーも同感で、証拠に基づいた新しい考え方が出てきたおかげで、これからは脊椎筋(棘筋、きょくきん)が少しはリラックスできるようになるのではと考えている。

 

「背中を真っすぐにして、座るときも立つときも曲げないという考えが、私たちの頭に何年も叩き込まれてきた。

 

脊椎は、体の中で最も頑丈な部位の一つ。何かを持ち上げるときは脊椎を曲げてリラックスさせ、強い脚と臀部の筋肉で持ち上げるように体を再訓練することが、背中の硬直と痛みに悩む人々の症状を改善する非常に有効な手段」


迷信3 完璧な姿勢

オサリバン教授自身が行った姿勢に関する研究結果は、全員に当てはまる完璧な姿勢はないという考え方を裏付けている。

 

彼が関わったある研究では、ヨーロッパ4カ国の理学療法士295名が、猫背や直立を含む9つのオプションの中から完璧な座位を一つだけ選ぶよう指示された。85パーセントの参加者の回答は二つのオプションに集中したが、この二つはまったく違う姿勢だった。

 

「訓練を受けた理学療法士の中でさえ、ベストな姿勢に関する意見は一致しない。これもまた、完璧な姿勢などというものが存在しないことを示す証拠」 とマレーは語る。

 

オサリバン教授は「青年期の人々を対象とし、猫背で座ると数年後に背中が痛くなる可能性が予測できるかどうかも調べたが、やはり何のつながりも見られなかった。よって、猫背で座ると背中が痛くなるという通説を裏付ける証拠はない」 と補足する。

 

「仕事で座りっぱなしの人々は、背中を動かせる人間工学的なデスク環境にすることが重要。でも、私たちが生み出した、 “座るときは背筋を伸ばす”というルールの妥当性を裏付ける証拠はない」


自分が次に取りたい姿勢がベストな姿勢

オサリバン教授によると、座りがちなライフスタイルは体に悪いが、これと同じことが脊椎にも言える。

 

「姿勢が一定というのはおかしい。人間は多様な姿勢を取るのが当たり前なので、背筋を伸ばして座るより体を色んな風に動かす方が合理的」 と説明している。

 

「一日中拳を握りしめていれば前腕が痛くなるように、いつもおなかを引っ込めた状態で背筋を伸ばして座ろうとすると実際すごく疲れるし、不快感を覚える人もいるだろう」

 

これに賛同するマレーいわく、姿勢の変動は非常に重要。 
「ある特定の座位で固定するべきという考えは、役に立つものでもなければ、座る姿勢に関する最新の研究によって裏付けられるものでもない」


理学療法士スコット・マレーのアドバイス

●一日中猫背で背中が痛い人は、骨盤が真っすぐに立つ、より自然な姿勢で座るようにするべき。これで痛みが和らぐ場合は特にそうするべき。

●背筋が常に伸びていて背中に痛みを感じる人は、椅子に座った状態で背中を丸めてリラックスさせ、脊椎筋を使い過ぎないようにするといい。一日中猫背の人も、背中が真っすぐな人も定期的に休憩して、もっと動くように。

●脊椎と胴体の筋肉への負担が少ない快適な姿勢で座ること。座った状態で体幹を緊張させたりしないで。

●頻繁に動く。つまり、椅子に座りながら姿勢を頻繁に変えること。しばらく猫背になって筋肉をリラックスさせるのが気持ちいいなら、怖がらずにそうして。

●職場でもアクティブに。椅子から立ち上がり、歩き回ったりしてみる。動けば動くほどベター。

●オフィスでの首や背中の痛みには、姿勢以外の要因もある可能性が高い。これには、乱れた睡眠パターン、ストレス、不健康な生活習慣、日常的な運動不足、そして首や背中の痛みは座り方から来るという信念などが含まれる。

●痛みがなかなか改善しないなら、科学的な証拠に基づいた治療を行う熟練の臨床医に助けを求めよう。

 

※この記事は当初、The Westに掲載されました。

 

※この記事は、オーストラリア版ダウンロードから翻訳されました。

Text: Raquel de Brito Translation: Ai Igamoto Photo:Getty Images